テレワークを効果的に導入するためには、デメリットとなりうる部分を解消する必要があります。
実際に、デメリットの懸念からテレワークを導入できていない企業や、一度導入したものの取りやめてしまった企業の数は少なくありません。
東京都商工会議所の「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査(2021年11月実施)」によると、企業規模が小さいほどテレワークのデメリットに苦労しているという結果もあります。
しかし、テレワークは行政主導の「働き方改革」の中核を担うものです。感染症の状況などにかかわらず効果的に導入できるか否かという点は今後も重要なテーマとなるでしょう。
この記事では、テレワークのデメリットを確認したうえで、デメリットの解消法・解消後に得られるメリットなどを解説します。事例をふまえて紹介するので、テレワークを効果的に導入できていない企業様はぜひ参考にしてください。
企業が把握すべきテレワーク導入6つのデメリット
テレワーク導入によって生じるデメリットを把握することは、非常に重要です。
「なんとなく仕事が進めにくい」などの漠然としたものではなく、具体的にポイントを上げることで、どのように対策を取るべきかという方向性が見えるためです。
この章ではテレワークのデメリットを6項目解説します。
1.社員の勤怠管理・サボり対策の難しさ
オフィスに出社する場合と比較をすると、テレワーク下では社員の行動は自由です。逆に言えば、上司は部下を管理することがより難しくなります。
極端なケースでは、社員が1日中仕事をさぼっていたとしても、他のスタッフは一切そのことに気がつかない可能性があります。
勤怠管理を難しくしている要素の一つが、プライバシーの問題です。勤怠管理のために上司が部下のPCの利用状況や在籍状況を過度にチェックすると、パワハラやリモハラ(リモートハラスメント)として違法性が指摘される可能性があります。
2.コミュニケーションの悪化による組織力低下
テレワーク下では、オフィスに出社する場合のように気軽なコミュニケーションが取れなくなることがあります。
スマートフォン1台でもWeb会議が開催できるなど、利用できるツールは広がっているものの、意外と問題となる点が、何気ない雑談の機会が減ってしまうことです。
何気ない雑談の際の機会が少なくなることで、情報共有がうまくできなくなったりメンバー同士に距離感が生まれたりすることがあります。
3.テレワークになじみにくい業務
業務内容によっては、そもそもテレワークになじみにくい業務があります。
- 対面式の接客や営業
- 企業の外線電話を必要とするコールセンター
- 現地での作業が必要とされる製造・メンテナンス
テレワークになじみにくい業務は、仕事のやり方を変更することで対応できるものと、工夫をしても難しいものとにわかれます。
4.情報漏えいの問題
テレワークを導入した場合、業務の大半をオンラインでおこなうことになります。近年では、あらゆるものがネットワークにつながっているため、外部からの攻撃や利用時の不注意などにより、社内の重要情報が外部に流出するリスクがあります。
情報漏えいの問題については、テレワークの導入の有無にかかわらず、近年の企業にとって重要なテーマです。正確な知識をもち、常に最善の対策を取る姿勢が求められます。
5.研修のプログラムに工夫が必要
テレワーク下では、研修をはじめとした社員教育の実施が難しくなるケースがあります。
従来型のスクール形式の研修を実施するには、対象者全員が集合しなくてはならないためです。
特に、身体を使ったワークや全員で何かを創作するといった研修の実施が難しいと感じている企業が多くみられます。
6.社員のメンタル・モチベーション
社員のモチベーション低下が問題になることもあります。
- 上司や同僚の目がないことから、集中力を維持しづらい
- 1人で仕事をしている感覚になり、チームワークを感じにくい
- テレワークが適用される部署とされない部署との不公平感がある
- 評価制度が不透明で目標設定が難しい
上記のように、モチベーションが低下すると生産性の低下や社員の会社への帰属意識低下などの問題が生まれる可能性があります。結果的に、売上の低下や社員の離職などの問題に発展することもあります。
デメリットを解消することで得られるテレワークのメリット
テレワークには、デメリットの要因があることも事実ですが、導入の方法や工夫次第でデメリットを解消できます。そして、その場合にはテレワークならではのメリットも得られます。
この章では、テレワークならではのメリットを5点紹介します。
1.時代に適応した働き方を実現
フルタイムの終身雇用制度が崩れた今、場所や時間に左右されずに社員が就労できることは時代にマッチしています。
テレワークは、Withコロナ・アフターコロナ・2019年以降に行政主導でおこなわれていた「働き方改革」に合致したワークスタイルです。
テレワークは、コロナ禍の一時的なワークスタイルとして捉えられがちですが、将来的にも継続する働き方であると考えられます。そして、今後も主流となり得る働き方であるテレワークを効果的に導入することは、企業の存続・発展のために重要な要素です。
2.人材の確保が容易
テレワークを導入して運用すると、以下の面で人材確保が容易になります。
- 遠隔地のスタッフを在宅勤務者として雇用できる
- 育児や介護などの家庭の事情との両立のためにフルタイムの勤務が難しいスタッフを効果的に活用できる(在宅であれば家庭の事情と両立しやすい)
- 新卒・転職希望者を集めやすくなる(テレワーク対応ということで、時代のトレンドに合致した会社として見られ、入社意欲が高まりやすい)
逆に言えば、テレワークへの対応が遅れると、将来、必要な人材を雇用できなくなる可能性が高まります。
3.営業面での売上アップ・業務効率化
テレワークを導入することによって業務の効率化を図ることも可能です。
- 遠隔地の顧客に対して、リモートで営業することで交通費や移動時間を削減できる
- 決裁者が不在であっても、オンラインで稟議・承認を得ることができ、決済のスピードが早くなる
- 移動・宿泊・会場の手配をしなくても、会議を開催できる
これらを効果的に活用すれば、コストの削減と売上のアップを同時に実現することも可能です。
4.リスク分散・BCP対策に効果的
テレワークはリスク分散・BCP対策にも効果的です。
※BCP対策:企業が、自然災害・テロ・疫病の流行などに直面した際に、中核となる事業を継続するためにあらかじめ必要な対策・準備をおこなうこと。
コロナ禍でテレワークの導入が急増したという事実からもわかるように、テレワークは災害時にとても強い働き方です。
業務上の重要データなどもオンライン上で管理されるため、災害により事務所にアクセスできない場合や紙媒体の資料が焼失してしまった場合なども、被害を最小限に抑えられます。
5.社員のモチベーションアップ
テレワークは、ワーク・ライフ・バランスを整えやすい働き方でもあります。
休暇や空き時間などを効果的に使用できた社員は、日々の生活に充実感を得るでしょう。結果的に、会社への帰属意識の高まりや業務の質の向上などのメリットも期待できます。
テレワークのデメリットの解決策に有効なITツール・サービス
テレワークのデメリットを解消して、メリットを生かすためには、ITツールやサービスの活用も不可欠です。
この章では、テレワーク導入企業にオススメのツールを8種類紹介します。自社の業態や懸念される課題と照らし合わせながら確認してください。
1.バーチャルオフィスツール
バーチャルオフィスツールは、「オンライン出社」を可能とするWebツールです。バーチャルオフィスを利用すると、画面上にイラストで描かれたオフィスに社員の分身となるアバターを出社させ、あたかも事務所に出勤しているように仕事を進めることができます。
バーチャルオフィスツールが解決できるテレワークのデメリットは、以下の点です。
- コミュニケーション:バーチャルオフィス上で、音声やテキストで社員同士が自由に会話できます。相手の状況が一目でわかるため、オフィスにいるときのように状況に応じて会話できます。
- 会議・研修の質:Web会議にも利用可能です。資料共有や共有ホワイトボードの使用なども可能なので、一方向の会議や研修だけでなくブレインストーミングやワークショップにも活用できます。
- 勤怠管理:画面上で、リアルタイムに出退勤の状況や業務の内容が確認できます。
- 生産性:業務の進捗状況を確認しながら、チームとして業務を進められます。テレワークの「孤独感」を解消し、チームとして業務を進められます。
ツールごとに操作性や機能などは異なるものの、テレワーク下で最も「出社」に近い状態を作り出せるのがバーチャルオフィスツールです。
2.ビジネスチャットツール
Slackやチャットワークなどのビジネスチャットを使用すると、リアルタイムでの通信が容易になります。
LINEのような感覚で利用できるため、ふだんITツールやアプリになれていない方でも気軽に利用できるでしょう。さらに、大半のビジネスチャットにはビデオ会議機能も搭載されているため、簡単な会議程度であればビジネスチャットを使っておこなうことが可能です。
ビジネスチャットを使用して解決できるテレワークのデメリットは以下のとおりです。
- コミュニケーションの低下
他のツールとの連携にすぐれているツールが多いことも、ビジネスチャットの特徴です。
3.Web会議ツール
zoomやMicrosoft・teamsなどのWeb会議ツールは、会議以外に研修や情報共有の場面でも利用できます。例えば、以下のテレワークのデメリットを解消できます。
- 会議:双方の顔を見ながら会議を進められる他、画面共有・資料共有・チャットボックス機能などを活用できます
- 研修:リアルタイムのWeb会議を録画して、研修資料として繰り返し使用できます
Web会議ツールも、他のツールと併用することでより利便性を高めることが可能です。
4.勤怠管理ツール
勤怠管理ツールは、従業員のPCやスマートフォンをタイムカードのように利用できるツールです。アプリを端末に導入して使用するタイプのものが一般的です。
勤怠管理ツールを導入すると、以下のメリットが得られます。
- 社員の出勤状況
- 残業時間の把握
- 経理・労務管理スタッフの工数削減
勤怠管理ツールは、タイムカードの代わりだけではなく給与計算ソフトなどと連携して自動計算をする機能も搭載しています。
5.SFA・MAツール
テレワークでの営業やマーケティング業務のデメリットを改善するために効果的なツールは、SFA・MAツールです。
- SFA(Sales Force Automation):営業効率化のツールです。顧客情報・進捗状況・顧客との過去のやりとりなどを一元管理できることに加え、Web商談などの機能も搭載しています。テレワークと非常に相性のよいツールです。
- MA(Marketing Automation):マーケティングにおける見込み顧客の創出から育成までの一連の業務を自動化できるツールです。タイミングや相手のリアクションにあわせてステップメールを送信したり、キャンペーン告知をしたりする機能が搭載されています。
SFAやMAツールを効果的に活用することにより、Web商談やDM送付の質を高めることができます。
6.クラウドPBX・転送機能
担当部署のスタッフが全員テレワーク・リモートワークを選択すると事務所の外線電話を受けられなくなります。
そのようなケースで利用できるのが、クラウドPBXや電話転送機能です。
サービスによっては、従来の事務所の電話番号をスタッフのPCやスマートフォンで着信できます。
電波状況の問題や電話対応できるスタッフが十分に揃えられるかという課題は残るものの、顧客からのテレワーク下でも電話問い合わせやコールセンター業務をおこなえる可能性があります。
7.グループウェア・ワークフローシステム
サイボウズのようなグループウェアやワークフローは、情報共有や社内での稟議の滞りに対応したオンラインサービスです。
これらのサービスでは、テレワークでの以下のデメリット・課題を解決できます。
- 業務の進捗管理
- スケジュール管理
- 社内決済や稟議
また、重要書類の決裁や対外的な書類をオンライン上で確認する際には、電子署名のサービスを活用することで、セキュリティを高めることが可能です。
8.オンライン研修サービス
質の高いスキルアップ研修や新人研修の実施が難しいという課題に対しては、外部の研修会者のサービスを利用するという方法もあります。
研修サービス会社の多くはプログラムをうまく工夫して、実施が難しいと思われる双方向型研修・身体を使った研修・共同のワークなどにも対応しています。
また、低価格で受講できる定額制の研修サービスやビデオプログラムなど、研修の種類も非常に豊富です。課題にあったプログラムを見つけられる可能性が高いため、まずはオンライン研修会社の研修プログラムをチェックされてみてはいかがでしょうか?
テレワークのデメリットの解決策としての働き方の工夫
ツールを効果的に活用してもテレワークのデメリットの懸念が完全に払拭されないケースも想定されます。その場合には、働き方・制度を工夫することで対応できる場合があります。
このとき重要なことは、ツールの導入と働き方の工夫とのバランスをうまく取って、業務効率が最大になるように努めることです。
1.テレワークを実施する業務の振り分け
対面の必要な接客業務や工場での作業などは、物理的にテレワークの導入は不可能です。扱う商材や事業の規模によっては、コールセンターや営業職に関しても完全にテレワークに移行することが難しい状況もあるでしょう。
これらのテレワークに移行できない業務は、テレワークの導入を諦めざるを得ません。このとき重要なことは、以下の点です。
- スタッフへの説明を十分におこない、不公平感を抱かれないように注意する
- 業務を細分化して、テレワークに移行した方が効率の上がるタスクについてはテレワーク導入を検討する(例えば、営業職であっても資料作成や顧客情報の管理などの対面を伴わない業務はテレワークでおこなう、など)
テレワークの移行は「手段」であり、本来の目的は業務効率化や生産性向上です。だからこそ、柔軟な姿勢を見せることも重要です。
2.評価制度の改定
テレワークで快適に業務を進められる環境を整えても、評価制度が整っていないとスタッフのモチベーションが上がりにくくなることがあります。
特に、プロセス主義の側面が強い企業は、オンライン化によって評価の基準があいまいになりがちです。
わかりやすい評価基準を整えることで、社員は会社からの評価に納得することができます。さらに、成果達成へのモチベーションを高められるでしょう。
3.ガイドライン・ルールの策定
ツールの導入や評価制度の決定のほかに、ガイドラインやルールも必要です。
例えば、セキュリティ対策・勤務時間・休憩時間などは、ルール・ガイドラインが先に示されていないと社員の行動基準が明確になりません。
円滑に業務をおこなうためにも、セキュリティ対策の意味でも、ガイドライン・ルールは重要です。
テレワークの課題を解決した事例
ツールを導入した結果、テレワークの課題を解決することに成功した事例を2件紹介します。
この章で紹介するのは、当社VoicePingを効果的に活用して業務改善をおこなったケースです。
1.コミュニケーションの課題を解決して生産性向上|SANGO株式会社
SANGO株式会社は、フルリモート体制で業務をおこなっている営業支援会社です。
テレワーク導入後には、Web会議ツールなどを利用されていましたが、以下の課題が浮上していました。
- メンバーの動きがつかめず、声をかけてよいタイミングがわからない
- Web会議開催に手間がかかり、結果的にコミュニケーションの量が低下する
- メンバー1人ひとりの生産性が高まらない
VoicePingを導入し、さらにGoogleカレンダーと連携をさせることで、メンバーの現在の状況・業務の進捗が明確になり、気軽にコミュニケーションが取れるようになりました。また、業務にかかる時間を予想・管理する機能により一人ひとりの生産性も向上しています。
2.複雑な内容の話題をリアルタイムな会話で解決|どこでもドアVR
「どこでもドアVR」を運営する株式会社Travel DXでは、テレワークの導入後に抽象的・複雑な内容の業務連絡がうまくできないという課題がありました。
当初は、メールやビジネスチャットなどでコミュニケーションを取っていたため、技術面に関する内容が相互にうまく伝わらなかったのです。
これらのデメリットは、VoicePingによって以下のように解決しました。
- 話しかけてもよいタイミングが一目でわかるため、音声でのコミュニケーションが容易になり、無駄なやりとりが減った
- 音声が同時に翻訳・文字起こしされるため、日本語の苦手なエンジニアでもスムーズなコミュニケーションを取れるようになった
まとめ
テレワークを従来の業務にそのまま当てはめて導入しようとした場合に、さまざまなデメリットが生じるのは事実です。特に、コミュニケーションの問題については多くの企業で問題視されています。
しかし、大半の課題が解決可能であることもまた事実です。
そして、テレワークのデメリットを解消した場合には、従来の働き方以上の生産性向上・業務効率の改善などの効果が得られます。
本記事で紹介したツールの活用や働き方の工夫を参考に、テレワークを最善の形で導入するヒントとしていただけたら幸いです。